こんにちは。よろず相談行政書士の毛利です。
日頃のちょっとした悩みに行政書士がお答えする、教えてもーりーのコーナーです。
今回は板橋区成増にお住いの社本幸長さん(仮名)からのご相談です。

Q.個人事業から法人成りした場合、わたしの生活費はどうやってもらったらいいのでしょうか?

個人事業を営んでいると、事業と生活の境界が曖昧になりがちです。
それまで何となく自分のお金だったものが、会社のお金となってしまい、自由にできなくなってしまいます。
法人成りして会社組織となった場合、個人と法人では別の存在となるからです。
それまでのように曖昧なままでは、会計に矛盾が生じてしまい、痛くない腹を探られることもあるかもしれません。
では、社長が会社からうまいこと報酬を受け取るには、どうすればいいのでしょうか?

大切なのは損金として認められるかどうか

これから説明する3つの方法は、手続き的にはどれも可能です。
問題なのは、それが損金として認められるかどうかです。
損金に参入できれば、その分は所得から控除されるので、法人税は課税されません。
ところが、損金と認められない場合、その費用は法人の所得として法人税が課税されるだけではありません。
受け取った社長個人の所得として、所得税も課税されてしまいます。
税金が二重に課税されることのないよう、報酬を支払う必要があります。

その1:会社から社長個人に業務委託する

会社と個人は別の存在なので、社長が業務を請け負ったことにして、業務委託費として支払うという方法です。
結論からいって、これはダメです。

社長は会社の代表権を持っています。
そのため、会社の業務を社長が行うことは当然のことと考えられます。
業務委託の形式をとったとしても、当該業務委託費は役員報酬とみなされます。

後で説明しますが、役員報酬は事業年度の開始3か月以内に一定の額を決めて、毎月支払うようにする必要があります。
事業年度内の増額、特別な報酬はすべて、損金と認めてはもらえません。

したがって、この方法では、法人税と所得税が二重に取られてしまうことになります。

その2:役員報酬として支払う(定期同額給与)

役員報酬を支払う方法としては以下の3通りがあります。

  1. 定期同額給与
  2. 事前確定届出給与
  3. 利益連動給与

このうち、3.は上場企業が対象ですので、説明を省略します。

1.は毎月定額を支給する方法です。
社長への報酬支払いは、この方法が一般的に用いられています。

事業年度開始から3か月以内に株主総会や社員総会等で額を決めて、その金額を毎月支給します。
金額が不相当に高額などの事情がなければ、全額が損金と認められます。

ただし、金額を決めることができるのは、事業年度開始から3カ月以内の1度だけです。期中に増額した場合、増額部分については、原則として損金算入できません。

その3:役員報酬として支払う(事前確定届出給与)

2.は、あらかじめ決めておいた時期に決めた額を支給する旨の定めに基づいて報酬を支払う方法です。
主に非常勤の役員に報酬を支払う方法として用いられています。

会社を新設した場合は、設立から2か月以内に株主総会や社員総会等で時期と額を決めて、税務署に届出をする必要があります。
届出した金額を支給した場合は全額損金となります。
届出と異なる金額を支給した場合は、全額が損金と認められないことになります。
なお、この届出は毎年する必要があるので注意が必要です。

「定期同額給与」で間違いない

以上のことから、通常は「定期同額給与」にしておけば間違いないと思います。
他に定期的な収入があるなどの特別な事情があれば、「事前確定届出給与」がいいでしょう。
どちらを採用するにしても、事前に1年間の収支予測を立て、その中からどのくらいとってもいいかを考えます。
具体的な額については税理士と相談することをお勧めします。

最後に

毎月の役員報酬の額は、基本金の額の算出にも関係してくるので、大変重要です。
会社設立前はもちろんのこと、設立後も毎事業年度開始前に計画を立てておく必要があります。
年度の途中で足りなくなってひもじい思いをしないよう、気をつけてくださいね。

ご不明な点は何なりと、お問い合わせください

最後までお付きあいいただき、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。