【日本版DBS】どう設計すればいい?犯罪事実確認記録等のアクセス権限。「最小権限の原則」を解説

こんにちは。行政書士・情報処理安全確保支援士の毛利です。
日頃のちょっとした悩みに行政書士がお答えする、教えてもーりーのコーナーです。
今回は、犯罪事実確認記録等へのアクセス権限の設計についてのお話です。

「最小権限の原則」が基本!

これまでの記事で、情報管理措置には「アクセス権限の設計」が欠かせないことを繰り返しお伝えしてきました。
しかし、「具体的にどう設計すればいいのか?」という点は、法律の条文を読むだけでは分かりません。

この記事では、情報セキュリティの世界で基本とされる「最小権限の原則」という考え方をもとに、犯罪事実確認記録等へのアクセス権限をどう設計すべきかを、行政書士かつ情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の立場から具体的に解説します。

なぜアクセス権限の設計が必要なのか

こまもろうシステムで得た犯罪事実確認記録等は、性犯罪前科という極めて機微な個人情報です。
この情報に「誰が」「どこまで」アクセスできるかを設計せずに運用すると、以下のようなリスクが生じます。

  • 業務上不要な人にまで情報が見える状態になり、漏えいの機会が増える
  • 誰がいつ情報を見たのかが分からず、問題発生時に原因を特定できない
  • 退職・異動した人のアクセス権限が残り続け、管理外の状態で情報が閲覧可能になる

情報管理規程に「取扱者」を記載するだけでは、これらのリスクは解消されません。
規程に書いた内容を、実際のシステム・運用に反映させる作業が、アクセス権限の設計です。

「最小権限の原則」とは?

最小権限の原則とは、情報セキュリティの世界で広く使われている基本的な考え方で、「業務上必要な人に、必要な範囲でのみ、アクセス権限を与える」というものです。

「念のため、みんなが見られるようにしておく」などという発想は、最小権限の原則の対極にあります。
情報管理措置においても、この原則に基づいた設計が当然に求められます。

犯罪事実確認記録等のアクセス権限、設計の3ステップ

ステップ1:業務上、本当に必要な人を特定する

まず、犯罪事実確認記録等に「業務上、本当にアクセスする必要がある人」を特定します。

  • 施設長・園長・代表者などの管理責任者
  • 人事・採用担当者(新規採用時の確認に必要な場合)

現場の一般スタッフ、アルバイト・パートスタッフの大多数は、通常この情報にアクセスする必要はありません。
「知っておいた方が安心だから」という理由でアクセス権限を与えることは、最小権限の原則に反します。

ステップ2:「見る・記録する・削除する」の権限を分ける

アクセス権限は、一括りに「アクセスできる/できない」で考えるのではなく、以下のように行為ごとに分けて設計すると、より安全な体制になります。

権限の種類内容与える対象の例
閲覧権限情報を見ることができる管理責任者、および人事・採用担当者(新規採用時など、業務上の必要がある場合に限る)
記録・保存権限情報を記録・保存できる管理責任者、または管理責任者が指名した特定の担当者1名
削除・廃棄権限情報を削除・廃棄できる管理責任者のみ(担当者が廃棄作業を行う場合も、管理責任者の承認・立会いを必須とする)

このように、権限の種類によって対象者の範囲を変えることがポイントです。
「閲覧」よりも「記録・保存」、「記録・保存」よりも「削除・廃棄」のほうが、情報に対する影響が大きい行為であるため、より限定された人にのみ権限を与える設計が望まれます。

複数拠点を持つ事業者では、本部と各拠点でこの権限をどう分けるかも、事前に整理しておく必要があります。

ステップ3:権限を持つ人を定期的に見直す

アクセス権限は、一度設定したら終わりではありません。
以下のタイミングで、権限が今も適切かを見直す必要があります。

  • 担当者の異動・退職(権限の削除)
  • 新任者の着任(権限の新規付与)
  • 組織体制の変更(拠点の増加・部署の再編等)

この見直しの仕組みそのものが、こども性暴力防止法施行ガイドラインが求める「取扱状況の把握・情報管理措置の見直し」の一部を構成します。

退職者のアクセス権限、削除し忘れを防ぐ仕組み

情報管理措置において特に多い失敗が、退職者のアクセス権限が削除されずに残ってしまうことです。
これを防ぐためには、「気をつける」という個人の注意力に頼ることはせず、業務プロセスに組み込むことが重要です。

  • 退職手続きのチェックリストに「システムアクセス権限の削除」を必須項目として組み込む
  • 退職が決まった時点で、退職日を待たずに権限削除の予定日を確定させる
  • 権限削除が完了したことを、人事担当者以外の第三者が確認する仕組みを作る

「誰か一人が忘れずに対応する」体制ではなく、仕組みとして削除される体制を作ることが、実効性のあるアクセス権限管理につながります。

複数拠点・フランチャイズの場合の権限設計

複数の拠点やフランチャイズ形式で運営している場合、アクセス権限の設計はより複雑になります。

  • 本部が全拠点の情報を一元的に管理し、各拠点は自拠点の情報のみアクセスできるようにするか
  • 各拠点の責任者にどこまでの権限を持たせるか
  • フランチャイズ加盟店の場合、本部と加盟店のどちらが情報管理の責任を負うか

こども性暴力防止法施行ガイドラインには、本部・加盟店間の役割分担の参考例が示されています。
自事業の組織構造に応じて、権限設計を事前に整理しておくことをおすすめします。

システムと紙媒体、それぞれのアクセス制御

犯罪事実確認記録等をこまもろうシステム以外の場所(紙媒体・その他の電子媒体)でも記録・保存する場合は、それぞれに応じたアクセス制御が必要です。

システム(こまもろうシステム等)の場合

  • ログイン権限を最小権限の原則に基づいて設定する
  • パスワードの適切な管理(共有IDの使用を禁止する等)
  • アクセスログが残る場合は、定期的に確認する

紙媒体の場合

  • 施錠可能なキャビネットで保管する
  • キャビネットの鍵を管理する担当者を限定する
  • 閲覧した場合の記録(閲覧簿等)を残す

よくある質問

小規模な事業者で、担当者が実質1人しかいない場合はどうすればいいですか?

担当者が1人であっても、その担当者が不在の場合の代替フロー(誰がバックアップするか?)を事前に検討しておくことをおすすめします。
また、「ひな型①:責任者一人のみ・記録保存なし」が、この体制に対応しています。

システムのアクセスログは、こまもろうシステム側で自動的に記録されますか?

システムの仕様については、こども家庭庁が公表する最新のマニュアル等をご確認ください。
システム側の記録内容に応じて、事業者側で追加の記録・管理が必要になる場合があります。

アクセス権限の設計を、後から変更することはできますか?

もちろん可能です。
組織体制の変化に応じて、情報管理規程とアクセス権限の設計を随時見直すことが、求められています。

まとめ

犯罪事実確認記録等のアクセス権限は、「最小権限の原則」に基づいて設計することが重要です。

  • 業務上、本当に必要な人にだけアクセス権限を与える
  • 「閲覧・記録・削除」の権限を分けて設計する
  • 退職者のアクセス権限削除は、個人の注意力に頼らず仕組みとして構築する
  • 複数拠点・フランチャイズの場合は、事前に役割分担を整理する

アクセス権限の設計は、法律の条文を読むだけでは分からない、情報セキュリティの実務知識が必要な領域です。
「自施設のアクセス権限をどう設計すればいいか相談したい」という事業者のみなさま、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

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